すみれ荘ファミリア
凪良ゆう著『すみれ荘ファミリア』を読みました。
作家というのは時代を的確に捉え、それを架空の人物に語らせるのが上手い。
女性の地位、世代や性別による結婚観の違い、SNSなどの在り方を
格差や差別をテーマにうまく絡めて令和の世の生きにくさを滑らかに描いていた。
すみれ荘という下宿はもちろんだが、血の繋がる家族も所詮他人同士だ。
本人の意思はともかく隠された顔があるし、考え方も一様だ。結婚は女が尽くす行為と認識する人もいれば金で買った愛のほうがフラットに付き合える人もいる。
考え方が多種多様ならば、偏見や差別も十人十色で、自分なりの答えを見つけてもそれが正解とは限らない。所詮他人の集まり、なにをもって正解かすら誰が判断するのか。
だから自分なりの答えを受け入れれば、なんとか毎日は続くんだなみたいなことを書いてる本だよ、これ。
凪良ゆうは生きづらい人びとの葛藤や苛立ちを書くのが上手いわ。流浪の月も好きだった。
他の作品も買うか〜。
おまけの表面張力が数十ページなのにおもわず「キショ……」と呟いてしまう嫌な後味だった。この路線は湊かなえで十分だ。